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『お前と平助が庇っただけでなく、あの副長までが庇った。そして更にお前が仕事に穴を開けてまで付き添ったとあれば、更に九条が貶められる恐れがある。…裏で色仕掛けでもしたのだろう、と。お前は九条がそう言われても良いのか?』
朔が平隊士と揉めた日、斎藤はそう言って沖田を諭した。
あの言葉で目が覚めた。
自分が朔を構えば構う程、朔の立場は悪くなるのだと。
朔を思うなら、今までの様に接してはならないと。
「現状では、私が朔さんに構えば構うだけ隊士達の朔さんに対する反感が増す。…別に私がどうこう言われるのは構いませんが、朔さんが標的にされるのだけは我慢出来ませんでした。だって、朔さんは悪くないんですから。私が勝手に構っただけなんですから。…彼女の為と思えば、彼女に構うのを我慢するくらい、どうって事ありません」
それに、自分の独占欲で朔が他者と関わるのを制限する事は、朔の為にならない。
そう気付いた。
朔には斎藤の無言の優しさも、藤堂の眩しい笑顔も、土方のさり気ない気遣いも、永倉や原田達の見守る様な大きな優しさも全て必要なのだ。
自分の我儘で彼らとの関わりを制限すれば、朔の世界は狭いままだ。
それは沖田も望まぬ事だった。彼女にはもっと広い世界を知って欲しかった。
まるで籠の中の世界しか知らない、籠の鳥の様な彼女に、籠の外の世界を教えたかった。
自由に囀り、羽ばたける世界があるのだと。
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