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そう言う桂さんに俺は眉を顰めた。
この人はそんな事を考えていたのか…。
まったく、本当に怖い人だ。
というか、俺が本気にならなかったらどうするんだ?
長州で急進派を一人で抑えている晋作は、頑張り損じゃないのか?
まぁ、実際は沖田や斎藤にぶつけてみても俺はいまいちな反応だったが、朔ちゃんに恋着した結果、桂さんの狙い通りになった訳だが…朔ちゃんに恋着したのは、完全に桂さんの計算外の筈だ。
何せ俺自身が計算外なんだから。
「…結果としては貴方の思惑通りになりましたが、俺が本気にならなかったらどうするつもりだったんですか?朔ちゃんに恋着したのだって、完全なる計算外の筈ですけど?」
「そうだね。嬉しい誤算で良かったよ。君が彼女に恋着しなかったら、きっと私の目論みは無駄になっていたからね」
晋作も頑張り損だ…と言って笑う桂さんに、俺は頭痛がした。
完全なる博打だったって事か…。
「まぁ…だからこそ、余計に吉田らしくないと思うんだけど」
何がだ?
訝しげな視線を向けると、桂さんはいやに真面目な顔をしていた。
「そこまで執着した相手なのに、何故あんな真似を?本当に彼女が欲しければ、もっと違う手段があっただろうに。あれではお前への憎しみが増すだけで、彼女がお前を見る事などなくなるのではないかい?」
俺への憎しみだけが増し、俺を見る事などなくなる。
桂さんの言葉に俺は視線を畳に落とした。
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