送り火

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「今日の夜?」 ご飯をよそったお茶碗を藤堂へ手渡しつつ、朔がそう聞き返せば、藤堂は口の中に入っている魚を飲み込みながら頷いた。 「そう!今日さ、送り火の日なんだけど一緒に見に行かない?俺、珍しく非番勝ち取ったんだ!」 目をきらきら輝かせてそう言う藤堂に、朔は首を傾げた。 「勝ち取った?」 朔の記憶違いでなければ、勤務は土方が割り振りをし、毎朝の諸注意の時に発表されていた。 幹部も、それは例外でない。 個人の意見が通る事は、よほどの事情がない限り有り得なかった。 なのに、勝ち取ったとはどういう意味なのだろうか。 「あぁ、そっか。嬢ちゃんは知らなかったか。今日みてぇな送り火の日や、この間の祇園祭の日なんかはさ、やっぱり見物に行きてぇだろ?で、不満が出ねぇように、そういう日は籤引きで誰が非番か決めるんだよ」 「籤引きなら自分で引いた籤だから、不満が出ねぇからな」 朔の疑問を解消するように、藤堂の隣りに座る原田と永倉がそう教えれば、朔は納得した様に小さく笑った。 「そうだったんですね。確かに、それなら不満も出ませんね」 「まぁね。でも俺達幹部はさ、平隊士の奴等より仕事の籤を引く確率高いんだよなぁ」 「そうなの?平助」 盛大な溜め息と共に呟かれた藤堂の言葉に、朔は再び首を傾げる。 籤引きならば全員、確率は同じなのではないだろうか?
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