送り火

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「幹部用の籤と平隊士用の籤があるんだよ。幹部の籤なんて巡察引き当てる確率五割だぜ?平隊士とは比べもんにならねぇ高確率だよ。あいつらは非番籤のが多いからな」 「少しでも多く非番者を作ってやろうって近藤さんの親心なんだけど…巡察組を少数に絞った結果、戦力低下は免れない。そこで、少数でも戦力底上げの為、俺達幹部の人数が多いんだ。ま、普段はあいつらに大変な思いさせてるからな」 藤堂の言葉を受け、永倉がそう続けると、藤堂は「そういう事」っと頷いていた。 「だから、幹部の籤引きは、ちょっとした争奪戦になるんだよ」 幹部の籤引きは毎回、壮絶であった。 まず籤が入っている箱に辿り着くとこから争いである。 お互いに足掛けや肘で小突きあったりする妨害は当然だ。 そして、籤を引いた後も争いは終わらない。 非番の籤を引いたからといって油断は禁物だ。うかうかしているとその籤を奪われるのだ。 そう、幹部達の勝負は籤を引き終えたところから始まると言っても過言ではないだろう。 「俺、籤運悪くって何でか、いっつも巡察だったんだけど、今回は非番引き当てたんだ!だから、一緒に見に行こうよ!!俺、案内するよ」 「へぇ…今日の夜は巡察に行かなきゃいけない私の前で朔さんを誘いますか。良い度胸してますね」 藤堂が僅かに身を乗り出して、朔に再び誘いをかけると同時に、広間の襖が開き、背筋が凍る様な冷たい声が響いた。
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