山崎の一日

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………せやけど、やっぱり気が進まん。 足取りも重たくなるってもんや。 あぁ、ほら今も絶対に沖田はんが居なさそうな所に向かっとる。 井戸なんて、この時間は基本誰もおらん。 稽古直後でもあらへんし、自主稽古した奴が汗拭きに来るくらいや。 あの沖田はんが自主稽古なんてするわけないし。 あの人の強さは別格や。稽古なんて必要とせぇへん。鍛練は欠かさずしとるが、あの人が稽古に励む姿なんて見たことあらへん。 あの人は本当の天才や。 ………天才って、本当におるんやな… そうこうしている内に井戸に着いてもうた。 予想通り誰もおら……ん?誰かおる? あれは藤堂はん? 自主稽古してたんやろか? 藤堂はんは…そういうとこは真面目なお人やからな。 藤堂はんの他は、隊士が一人か。 ん?何やあの隊士、さっきから藤堂はんの事ちらちら見とるな。 あの反応……本当に勘弁しとくれや。 ややこしい事態に巻き込まれない内に退散すべきやな。藤堂はんも上手くあしらえるやろ。 ………ってあしらえてへんし!! 何でや!!
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