贈り物

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「いたいた!朔ちゃん!」 井戸で野菜を洗っていた朔がその声に顔を上げると、藤堂が駆け寄ってくるのが目に入り、朔は野菜を洗う手を止めた。 「平助、どうしたの?」 「ちょっと来てくれよ!」 藤堂はそう言うと朔の腕を掴み、引っ張る。 「え?ちょっ…ちょっと平助?私、野菜洗わないと」 「野菜は後で良いから」 「よ…良くない!雪さんに怒られちゃう」 「すぐ済むから。ちょっとだけだって」 朔の話を聞き入れてくれる気配の無い藤堂に朔は溜め息を吐いた。 ここまで言っても駄目ならば、きっともう何を言っても駄目だ。 ならば、抵抗するだけ無駄というもの。 諦めた方が結果的に早く仕事に戻ってこれる。 (どうか、雪さんの雷が落ちませんように…) 藤堂に引きずられるようにして朔は屯所の中へと向かった。
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