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「平助、一体何なの?用件くらい教えてくれても」
「着けば分かるから」
「どこに向かってるの?」
「それも着けば分かるから」
用件も行き先も教えてくれない藤堂に質問を投げ掛けてみるが、やはり答えは得られなかった。
朔の腕を掴みぐいぐいと引っ張って歩く藤堂は鼻歌を歌っており、やけに上機嫌だ。
そんな藤堂に朔は一抹の不安を覚えた。
「……ねぇ、平助」
「何?」
「悪巧み…じゃないわよね?土方さんの逆鱗に触れるのだけは嫌よ」
「俺だって嫌だよ!そんな命の綱渡りを好んでするのは総司くらいだって!俺はもう二度とごめんだって!」
物凄い勢いで振り返り否定する藤堂に、朔はその言葉が嘘ではないことを確信した。
(……だけど、二度とってことは前に一回やったことがあるのね…)
だからこそ、この反応なのだろう。
当時の恐怖を思い出したのか、藤堂の顔は青ざめ、身震いまでしている。
ここまで恐怖を植え付けられる程に土方を怒らせたとは、一体何をやったのか。
朔は聞きたいような聞きたくないような複雑な心境だった。
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