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頭から被せられた布を取ると、朔はその布の正体に目を瞬かせた。
「……着物?」
朔の手には赤みの混じった紫色の着物があった。
けして華美な印象はなく、どちらかというと上品で落ち着いた色合いだ。
「え?…これ…」
状況が分からず戸惑う朔に、永倉と原田と藤堂はどこか誇らしげに笑う。
「朔ちゃんにやるよ」
「え?…ええっ!」
「嬢ちゃん、自分の着物無いだろ?雪から借りてて不便は無いだろうけど、一枚くらい自分の着物あっても良いだろ?」
確かに朔は雪の着物を借りていた。申し訳ないとは思いつつも、着物など持っていないし、着物や反物を買うだけのお金がなく、朔は雪の好意に甘えるしかなかった。
「でも…」
「良いの良いの。気にしないで。俺達からの贈り物。朔ちゃんにはいつもお世話になってるからさ」
藤堂の言葉に同意するように永倉と原田も頷く。
「そうそう。俺達…結構迷惑かけてきただろ?」
「そんなこと……」
すまなそうな顔でそう言う永倉に朔は首を振ろうとしたが、途中でその動きは止まった。
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