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「あ…あのっ!沖田さん!!」
「何ですか?朔さん」
「あんまり平助を苛めないであげて下さい」
朔が執り成すように声をかけると、沖田は渋い顔を見せたが、朔にそう言われては何も言えない。
本音を言えば、朔が藤堂の肩を持つのは癪に障るが、自身が藤堂に対して相当我が儘を言っている自覚もあり、朔が藤堂の肩を持つのも当然だと納得する自分もいた。
(分かってますけど…折角ですし、朔さんと送り火見に行きたかったんですよね…。でも、これ以上平助を苛めて朔さんに嫌われたくもないですし…惚れた弱味ってやつですかね)
沖田は、はぁ…と溜め息を零すと、ちらりと横目で斎藤を見た。
隣りでこれだけ騒がしくしていても、無関係を貫き、静かに食事をしている斎藤も、非番を引き当てた勝ち組だった。
「一君…」
「断る」
沖田の声に、視線も合わせず即座に、ぴしゃりと言い放つ斎藤に沖田は瞬きをした。
「あの…一君?まだ何も言ってないんですけど?」
「皆まで聞かずとも分かる」
無表情のまま、昼餉を食す斎藤に、沖田は溜め息を零した。
(やっぱり一君にお願いするのは無謀でしたか…今年は諦めますか)
沖田は仕方が無いと諦めたが、どこかしょんぼりしていたのだろう。
朔が再び声を掛けてきた。
「あ…あの、沖田さんの好物を用意してお帰りを待ってますから」
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