正義の味方が現れた

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ねっとりとした水分が腕全体にまとわりつく。 緑の鱗が隙間を作り、そこから液体が染み出ているのだろう、とにかく不快度が許可量を突破し、今にでも蹴り飛ばしてやりたかったが、なぜだかからだが動かない。 「グエケケケ……動けないだろう? 俺の粘液に触れたヤツは皆動けなくなるのさ、お前は何もできないまま死んでいく、ゲケケケ!」 ああ、何て説明したがりなのだろう、ただ雨宮は自分が動けなくなっているだけなのに。 しかし、やつが言う粘液とが自らの行動範囲が制限されているのはバカでもわかった、後は逃げるだけ……と軽く思っていたが、残念なことに背中に足にすべてがやつに密着状態になってしまい、汗が染み込んだ制服を伝い体の前面にまで粘液に触れた状態になってしまっていることに、今やっとバカは実感したのだ、バカなのか鈍感なのか、彼は極限状態に追い込まれない限り自覚しないのだ。 「キケケ……それじゃあ、遅い昼食にでもしようかね……」 こいつの笑い声は固定されないのか、正直うざったいが、同時にどうでもよくなった、生死の境界線に15歳で差し掛かってしまったのだ。 だが、このばか野郎はそんな境遇でも頭の中には食う・寝る・涼むしかなく、家帰ってゴリゴリ君食べたかったなあとか、死ぬ前にクーラーにあたっておきたかったなあとあ、一日中寝ることができなかったなあとかしか考えられなかった、何てバカだろう。 そんな平和的に死を迎えようとした矢先、近くで傍観していた電信柱の上から、ダンディな男の声が聞こえた。 「その辺にしたらどうだ? 気持ちわりぃトカゲ男さんよぉ」 その声に反応し、誰だと悪役らしい声をあげたトカゲ男の期待に応えるかのように、男の影はアスファルトに落ちた。 そのりりしくたった姿は、荒野だったら似合っただろうなカウボーイスタイルだった。 明らかに変人にしか見えなかった。
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