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うっかり電車の中に置いてきてしまったみたい。どうしよう。すごい土砂降りだ。
「あの」
改札をでて雨を眺めていたら後ろから声がした。
「あの、
よければ使ってくださいっ。」
後ろを振り替えると紺色の傘が目の前に差し出されている。
視線を少し上にあげると黒い縁のメガネをかけた黒髪の男の人と目が合った。
「ぁ、…ありがとうございます。でも、」
すごくすごくありがたいけど、傘がなくて困るのはお互い様だ。
「今、上司にあってしまって飲みに付き合わなければいけなくなってしまって」
スーツ姿の彼はまゆ毛をハの字にしながら笑った。
「帰りはタクシーで送ってもらえるので傘なくても平気です。」
少し得意げな顔をして言われてしまった。
どうしよう。すごく助かるんだけど、初対面だし、今度いつ会えるかも分からないから傘が返せなくなってしまう。
「いつもこの駅使ってるんで傘は会えた時でいいですよ」
また得意げに言われた。しかも私の心よんだみたいに。
でも、もし…
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