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12時少し前の事です。
ウーシャが消えた本が、風もないのにパラパラと開きました。
次の瞬間…真っ白いその頁に、静かに文字が浮かび上がりました。
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お月さまを見つけて、ウーシャと太一(たいち)はとばりの国から戻るはずでした。
でも、戻っても太一の住む日本には、食べるものなんか有りません。
下には7人の兄弟がお腹を空かせて…お父さんとお母さんはいつも仕事で遅くて…
もう限界でした。
ここには誰もいない代わりに、誰もいない八百屋さん・呉服屋さん… 食べ物も、小さくなって着られなくて、買えない服も…なんでもありました。
太一はキュッと唇を咬み…決心したようにウーシャを見ました。
「ウーシャ…僕、ここに残る…ここにいる」
「えっ……待って太一!!」
その時の切な気なウーシャを振り切って、僕はさっきまでお月さまがいた八百屋へ駆け出しました。
僕の後ろで、ウーシャが僕に叫んでいるのを…聞かないふりをして…
しばらくして気が付くと、僕には影がありませんでした。
ここでは時間と言うものが…全くわかりませんでした。
ただ、八百屋さんだった建物が…まるで積木の様に大きくなって…見たことのない新しい食べ物や、服が…増えて行きました。
お月さまは時々やって来ました。
その度にウーシャはお月さまを探しにやって来ました。
僕は寂しくて、お月さまを隠すようになりました。
そして、誰もいないとばりの国で、寂しかった僕は…
ウーシャの連れてきた子達を仲間にしていきました。
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