不思議な本

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12時少し前の事です。 ウーシャが消えた本が、風もないのにパラパラと開きました。 次の瞬間…真っ白いその頁に、静かに文字が浮かび上がりました。 ********************** お月さまを見つけて、ウーシャと太一(たいち)はとばりの国から戻るはずでした。 でも、戻っても太一の住む日本には、食べるものなんか有りません。 下には7人の兄弟がお腹を空かせて…お父さんとお母さんはいつも仕事で遅くて… もう限界でした。 ここには誰もいない代わりに、誰もいない八百屋さん・呉服屋さん… 食べ物も、小さくなって着られなくて、買えない服も…なんでもありました。 太一はキュッと唇を咬み…決心したようにウーシャを見ました。 「ウーシャ…僕、ここに残る…ここにいる」 「えっ……待って太一!!」 その時の切な気なウーシャを振り切って、僕はさっきまでお月さまがいた八百屋へ駆け出しました。 僕の後ろで、ウーシャが僕に叫んでいるのを…聞かないふりをして… しばらくして気が付くと、僕には影がありませんでした。 ここでは時間と言うものが…全くわかりませんでした。 ただ、八百屋さんだった建物が…まるで積木の様に大きくなって…見たことのない新しい食べ物や、服が…増えて行きました。 お月さまは時々やって来ました。 その度にウーシャはお月さまを探しにやって来ました。 僕は寂しくて、お月さまを隠すようになりました。 そして、誰もいないとばりの国で、寂しかった僕は… ウーシャの連れてきた子達を仲間にしていきました。
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