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「もう行かなきゃ。和花、危ないから離れて……」
「弥白……」
たった一歩。
その一歩を踏み出せば、わたしは和花と一緒に居られる。
けど、それは出来ない。
わたし自身が決めたこと。
この思いを断ち切る為の、けじめ。
発車のベルが鳴り響く。
「弥白……また、会えるよね……?
私、メールするよ!電話も……。
だから……これで、さよならじゃないよね……?」
一瞬たりとも、わたしから目を離さない和花。
ドアが閉まる。
わたしと和花を遮る、鉄の塊。
「……またね」
聞こえたかどうか、判らない。
電車が進む。
和花がみるみる遠くなり、ついには見えなくなった。
窓の外は、空の青と桜のピンクが鮮やかに広がっている。
見慣れた街が、流れていく。
窓にうっすらと映ったわたしの頬は、紅くて。
唇に指をあてると、先程の感触が思い出される。
「……もぅ……心臓に悪いよ……」
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