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わたしに彼氏が出来るのか、って?
……そのうち、出来るといいなって、まるで他人事のように思う。
わたしだって、数年後にはカッコいい男の子を好きになりたい。
それが可能なら……だけど。
***
一階の玄関口に降りて、水飲み場に着いた。
蛇口を捻り、水で手を洗う。
季節は秋が終わりに近付き、冬に差し掛かる頃。
わたしにとっては、丁度良い気温で気持ちがいい。
グラウンドの方からは、運動部の様々な掛け声が聞こえてきた。
蛇口を戻した所で、ある事に気が付いた。
ハンカチを教室に忘れてきた。
仕方なしに手をパッパッと振っていると、ハンドタオルを差し出された。
びっくりして顔を上げると、クラスメイトの加賀谷(かがや)が立っていた。
ちなみに、クラスメイトといっても話したことはない。
わたしが差し出されたハンドタオルに手を付けられないでいると、
「俺、使ってないからキレイだよ。安心して?」
と言って、彼は笑った。
「いやー、そういう風に思ったわけじゃないんだけどね。
ありがとー」
わたしも彼の笑みにつられて笑ってみた。
そしてようやく、その差し出されたタオルを受け取る。
わたしの掌に着いた水滴は、瞬く間に青いハンドタオルに吸収されていった。
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