1.秘密

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「本当にありがとー。 洗って返すね」 「別にいいよ、特別汚れたわけじゃないし」 そう言って加賀谷は、また手を差し出した。 わたしは躊躇したが、加賀谷がそう言うので、仕方なしに少しだけ湿ったタオルを、その手に乗せた。 加賀谷は、肩に掛けていた通学バッグにタオルをしまう。 「……羽柴は、こんな時間に何してたの?」 バッグを背負い直し、ふと、加賀谷が腕時計を見た。 わたしは空を見上げた。 薄暗い、冬の夕暮れだ。 「いつの間に結構な時間だったんだねぇ。 特に何してたってわけじゃないんだけど、まぁ、雑談……かな。 そういう加賀谷は?」 特に話そうと思ってはなかったのに、自然と質問してしまった。 加賀谷も嫌がる様子はなく、何が楽しいのかずっとニコニコしているように見える。 「俺は明日の委員会の準備。 一応、風紀委員長だしね」 風紀委員という言葉に、あぁと納得した。 「そういえばそうだったね。 確かカナもだったよね? 同じ委員なのに、ひどい差だなぁ」 カナはお菓子を食べながらのノロケ雑談。 加賀谷は放課後遅くまで委員会の準備。 さっすが、委員長様。 「雪城さんは委員だからね。 俺なんか、ずっと続けてたってだけで責任ある委員長だよ。偶々なのに」 はぁ、とため息を吐いて彼はバッグを肩からおろした。 ドサッと、バッグと地面の擦れる音がした。
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