1.秘密

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「お疲れのようだねー」 労りの言葉を投げかけ、わたしはスカートのポケットを漁る。 確かあった筈なんだけど。 加賀谷は、ポケットから何が出るのかといったような顔でこちらを見ている。 「……ん、あったあった。 コレあげる、お疲れの委員長様に甘いものー」 ポケットから出てきたのは赤い包装紙にくるまれた物。 わたしの手から、綺麗な弧を描いて加賀谷の手に落ちる。 「なに?」 「チョコレート。 あ、校則違反?」 カナや和花たちとお菓子食べてる時点で今更なんだけどねー、と付け足してニヤニヤした。 加賀谷は一瞬、困ったように笑って 「いただきます」 と言った。 赤い包装紙を剥がすと、甘い匂いが鼻を掠める。 「タオルのお礼と、お疲れ様の気持ちを込めて」 一口大のチョコレートは、加賀谷の口内ですぐに溶かされていったようだ。 甘い香りは、もう薄れていた。 「……そろそろ戻んなきゃ。 いい加減、カナのノロケ話打ち切って帰るとするよ」 「そうしてくれると有難いかな。 先生に見つかると厄介だしね」 じゃあ、と言って加賀谷に背を向けるとすぐに 「羽柴」 と呼び止められた。 「チョコ、ありがと」 そう言って加賀谷はひらひらと手を振っていた。 「どういたしまして」 ニカッと笑顔を返して、わたしは来た道を戻り教室へ向かった。
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