邂逅

2/11
734人が本棚に入れています
本棚に追加
/376ページ
 こんなことが本当にあるんだろうか。    自分でも信じられない。  ついさっきまで、ただの風景でしかなかったものが、こんなにも鮮明に映るなんて。  偶然?  必然?  運命?  くだらない。そんな使い古した言葉で、この感情を説明する事なんて出来ない。 「君だったんだ」  ただそれだけだ。  土砂降りの雨に濡れて少し震えながら、今にも壊れてしまいそうな後姿を見た時、わかってしまった。 「君だったんだね」  初めての気持ちなのに、迷いなんて無かった。  どうしてそんなに震えているの?  何にそんなに怯えているの?  何が君をそんなに傷つけたの?  守るから。  君を守るから。  ただ君だけを守るから。    だから、泣かないで。  顔を上げて、さあ。 「ごめんね」
/376ページ

最初のコメントを投稿しよう!