735人が本棚に入れています
本棚に追加
/376ページ
その日は散々だった。
バイトでつまらないミスを連発して、店長には怒鳴られるし、うるさいお局様には睨まれるし。
おまけに
「梅雨の合間に、久しぶりの晴間が覗きそうです」
なんて天気予報は大ハズレで、信じて傘を持たずに出た私は、帰り道の土砂降りの雨で心も身体もずぶ濡れになってしまった。
道行く人の視線が痛い。
なんで皆傘持ってるんだろう?天気予報を信じたのは私だけ?
「最悪・・・」
ついそんな言葉が口から漏れた。
雨の中で立ちすくんでしまった。
だって、もうあんな酷い事って人生でそう簡単に起こらないよってくらい、あの日の私は参っていた。
前日の出来事。
信じていた人の、一番大切にしていた人達の、最低の裏切り。
男に裏切られ、親友に裏切られて、その上お天気にも裏切られてね。
散々だ、もう十分過ぎるよ・・・。
だからせめて早く家にたどり着きたかったのに。
バイトだって休んでもおかしくないくらい辛かったのに、それでも妙に責任感の強い私は、休まずに行ったんだ、地面を這いつくばるような気持ちで。
涙こらえて必死で仕事を乗り切って、もう私を慰めてくれるのは、家のベッド、布団の中だけのような気がしてた。
だから、一秒でも早く家に帰りたかったのに・・・。
足が動かないや。
どうして・・・。
こんな酷い雨なのに。
最初のコメントを投稿しよう!