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「さっきはありがとう。」
涼くんと後片付けをしている最中、私は隣の涼くんに対して御礼を言う。「ああ。」と軽く返事をして、洗い終わった皿を拭いて戸棚へと戻している。その作業が終わると涼くんはうーんと少し考え込み、
「……それで、何がありがとうなんだ?」
まさか……気付いてない?そんな事は……!私は涼くんに、「さっき恵くんに止めないかって言ってくれたじゃない。」と説明する。「そうだったな。」と返してくれた。気付いて無かったよ……!ちょっと落ち込む私を余所に涼くんは真面目な表情になり、
「真雪は隙が多い。ああいうのはハッキリ断って良いんだぞ。大丈夫、恵はそれ位でどうこうなるような奴じゃない。」
隙が多いかぁ……そんな事無いとは思うんだけどなぁ。ちょっとヘコむかも。そんな私の様子を見兼ねてか、涼くんは更に言葉を付け足す。
「そういう所が真雪の優しさなんだろう。そう落ち込む事も無い。」
「……ありがとう。」と私が御礼を言うと、「大した事じゃない。俺の思った事をそのまま言っただけだ。」と涼くん。やっぱり優しいなぁ。私は布巾を消毒し終えると、少し笑う。涼くんには「?」と言うような顔をされたが、私は「秘密、です。」と敢えて涼くんに真意を伝えなかった。
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