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「……俺の、彼女役をして欲しい。」
「へぇ、彼女役ね……彼女や、彼女役ぅううう?!」
「うるせぇ!」耳を塞いでキレる誠くん。……確かに叫んだのは悪かったけど驚かずには居られなかった。だって私を嫌ってる誠くんが訪ねてきたのにも驚いたのに、私に彼女役を頼んできたなんて……!
「しょうがねーだろ!彼女居ないでしょとか言われて悔しかったから、次オフの時彼女連れて行ってやるよって大見得切って言っちまったんだから。」
「そうだったのか……。もしや明日は嵐に……!」
「予報では晴れだ馬鹿。」
蔑んだ目で嘲笑う誠くんに「冗談なのに。」と返せば、「チビの癖に生意気。」と返される。あーもう身長の事は放っといてよ!……あ、そしたら誠くんはもやしか。
「それで?誠くんは何で私に頼みに?」
「おばさんは最初から無理だし壱葉は撮影らしい。残るはお前。」
てか誠くんも壱葉知ってんのね。昔からの付き合いなのかな?羨ましい……。なんて事を考える。いかんいかん、私は話を続ける。
「消去法ですか……他のクラスの人とかは?」
「俺、通信だし。つーか気の知れん奴と馴れ合いとかマジ無理。」
「そっか……ゴメン。」拙い事聞いちゃったかな……そんな事を考えながら少し下を向いていると、ゴロゴロと椅子のキャスターが近付く音がして、ベチッと思い切り頭を叩かれる。
「痛った!ちょっといきなり何する……」
「何そんな事で落ち込んでんだ。らしくねーぞチビ。そういう考えは捨てろ。」
フン!と鼻を鳴らし、足で床を蹴り椅子のキャスターで遊ぶ誠くん。きっと誠くんはそういう事に触れたからといって、可哀想だと思われるのが嫌だったんだろうな。私は少し反省した。
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