殺すな生かせ

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一陣の風が吹き、あたりを薄暗くするほどだった土煙が流されていく。 「………………」 思わず息を飲んだ。 異形だった。 紫掛かった長い黒髪。 異国風の陣羽織を纏い、片目には眼帯。 見えている目は冬の氷のごとき眼差し。 一度見たら忘れそうにない女の兵……いや、一角の武将だろう。 「み、光弘ぉ!!」 サスケが短い前足を伸ばして異形の女武将の足元を指す。 そこには…… 「……御当主……」 そこには物言わぬ躯となった主の姿があった。 「こやつの家臣か……」 「だったら……だったらどうだ?」 「決まっている。根絶やしにするまでだ……」 女武将は刀を俺へと向ける。 「むざむざとやられるか……」 「………………」 俺はサスケを下ろすと刀を抜き、互いに対峙する。 俺にはそれなりの剣の心得があるが、心得がなくともわかるほどの冷たい殺気。 まるで氷柱で作られた刃のごとき、殺気だった。 「かかって来ぬか?来ぬなら行くぞ!」
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