17人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
一陣の風が吹き、あたりを薄暗くするほどだった土煙が流されていく。
「………………」
思わず息を飲んだ。
異形だった。
紫掛かった長い黒髪。
異国風の陣羽織を纏い、片目には眼帯。
見えている目は冬の氷のごとき眼差し。
一度見たら忘れそうにない女の兵……いや、一角の武将だろう。
「み、光弘ぉ!!」
サスケが短い前足を伸ばして異形の女武将の足元を指す。
そこには……
「……御当主……」
そこには物言わぬ躯となった主の姿があった。
「こやつの家臣か……」
「だったら……だったらどうだ?」
「決まっている。根絶やしにするまでだ……」
女武将は刀を俺へと向ける。
「むざむざとやられるか……」
「………………」
俺はサスケを下ろすと刀を抜き、互いに対峙する。
俺にはそれなりの剣の心得があるが、心得がなくともわかるほどの冷たい殺気。
まるで氷柱で作られた刃のごとき、殺気だった。
「かかって来ぬか?来ぬなら行くぞ!」
最初のコメントを投稿しよう!