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「あっ、す、すみません。なんだか微笑ましかったので」
「えへへっ。あかりさん! 鍛冶場の中を案内しますよっ。行きましょーっ!」
「あ、はっはいっ」
この日から、私の人生はガラリと変わる。
なんだか暗ったくて、いつも土の中で生活していたような陰気な私は、タイムくんの明るさに引き寄せられて、どんどん前向きに明るくなって行ったし。ジェノバさんの事を知るためにも、変わりたいって思った。とても悲しそうな目と、ボソボソ話す優しい声が、いつもどうしても気になって。どんな時も、ジェノバさんの事を考えるようになっていた。
鍛冶場の中の小さな小さな、手の平サイズの妖精さんや、小人のドワーフさんにご挨拶をして回り。私は、彼らの大好物と聞いていたクコの実を沢山お渡しした。それを見るなり目の色を変えて喰いあさる姿は、皆さんそれはもう。バーゲンの主婦のようで部屋中大騒ぎになってしまったけれど、何とか打ち解け。ここでも楽しくやっていけそうです。妖精さん達は騒がしいけど可愛いし、ドワーフさん達はすぐに甘えてくるけど優しくて物知りで働き者。
みなさん、ジェノバさんの指示で動き。毎日窯の火の番を交代で行い、武具の制作に励んでいます。
そして早速鍛冶場の隣のジェノバさんの私室にもすぐに案内されたので、私はお湯を沸かし。珈琲をお煎れしたのですが……超自信満々でお出しした私の珈琲を一口飲むなり、ジェノバさんの第一声は――。
「不味い」だった。
「えっ」
「ししょーは舌が子供なんですよ。あかりさん。あー美味しーっ、やっぱり珈琲はブラックで。そのまんまを頂くのが最高ですよーっ」タイムくんて若年より?
「舌が子供ってどーいう……」
「あかり、」
「はっ、はいっ!?」
「腹減った」
「あかりさん、ぼくもーっ」
ああ、びっくりした……。いや、もう珈琲はとりあえず仕方ないとして。
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