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でも彼は余りにも優しいから。笑って欲しいです、いつか。
ジェノバさんはきっと今頃ランニングを終えてシャワーを浴びている。浴び終わる前に飲み物を用意してパンを焼かなきゃ。今日は採れたてのブルーベリィをジャムにして。
彼の私室の扉を叩こうと――……あれ?
扉の横にある曇りガラスの隙間から、ジェノバさんの姿が見えた。シャワー、もう浴びたんだ。ちょっと今日はいつもより早いなぁ。私は口を尖らせて左手首の黒い時計を見た。すぐに視線をまた隙間から見えるジェノバさんに戻す。
ああ、書類全部担いでる右腕死にそう。今日は依頼品多そうだなぁ。あんまり無理をさせたくない。でもジェノバさんが剣を打たなきゃ、駄目なんだ。平和の為に、国の為に。
……ん?
作業着姿に上半身裸のジェノバさんは、冷蔵庫から私が昨日の晩に作っておいたアイスコーヒーをピッチャーのまま取り出して来た。それをコップに八分目まで注ぎ、食器棚の一番右上から何やら透明な液体が入った瓶を取る。それをたっぷりコップに注いで。マドラーでアイスコーヒーとその謎の液体を掻き混ぜた。
それをグビッと一気に飲み干す。
「っ飲んだ!!」バタバタッと、そう言いながら驚き顔で部屋に入った私。
「うわ、びっくりした」ジェノバさんが真顔で棒読みなのは、いつもの事ですがっ!
「ま、不味く無かったんですか?」
「ん……ぁあ。香りは良いんだけど、味が濃くて」
味が濃い?
「一体何を入れたんですか?」
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