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もしかしてジェノバさん、あれを飲んだのかな? だから、私を専属に? と、とにかく。同じもの作ってみよっと!
「っちょっと待ってて下さいねっ! 私、ジェノバさんが気に入るように。甘い珈琲お作りしますからっ」
世界に誇る英雄が飲むんだもの。冷たくて、甘くて、とびきり美味しくなきゃっ!
そっか。甘いのが飲みたかったのかぁ。ふんふん。よーしっ、氷よしっ! チョコレートよしっ! パウダーよしっ! えーと、後は……。
「おい、」
「へっ?」
「顔ちゃんと洗ってこいよ」
ガムシロップまみれの私の顔を、ジェノバさんは濡らしたタオルでゴシゴシ拭いてくださった。
「ふ、あっあっあ~。すみません~っ」
「お前はいつも、甘い匂いがするけどな」
「えっ?」
「蜜みたいな」
するりと、私の髪に触れたその大きな手は――火傷だらけ。切り傷だらけで。その綺麗でたくましい、野性的な表情と肉体と随分マッチしてる。
熱い瞳は、やっぱりすぐにそらされてしまって。すごく残念。そうしてまた、だんまりのあなた。もう慣れたけど。何度でも、この空気がいとおしく感じます。
気になるんです、凄く。あなたのその――少しだけ戸惑う雰囲気も、私を気遣う視線も何もかも。
そっと隠したそのぼろぼろの左手を。私は両手で包み込むように触れた。大切な、手。
「……気持ち悪いだろ」
――傷だらけだから?
そっか、英雄だって人間なんだ。
コンプレックスのひとつやふたつあるんだきっと。
「……いいえ」
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