鍛冶の堅物男と珈琲メイド娘。

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「そんな……。今日なんてその大事な花壇で寝たりしてっ! ご、ごめんなさいいっ!」  私は、誰かに感謝されるような事は何もしていない。でもこの子がそうして前向きにやっていることは、とっても嬉しいな。 「大丈夫です。そこは今何も植わっていませんから。新しい肥料を入れてこれから向日葵の種を撒くんです」 「えっひまわりー!?」  向日葵、大好きです。 「ふふ。喜ぶと思いました」 「あ……笑えるんですね」 「人を仏像みたいに言わないで下さい」 「ジェノバさん、全然笑ってくれないんですよ」 「そうなんですか? 彼、我慢しているのでは?」 「え!? なんで!? そんな馬鹿な!」 「アナタ、やっぱり鈍感なんですね」  ん? 鈍感って? 「アナタじゃなくってあかりって呼んで下さい~」 「え、ああ。わかりました。アナタはアタシの名前覚えて無いのに良いんですか」 「す、みません……でし、た」 「自己紹介良いですか?」 「ぜぜぜぜ是非っ!」 「きらりです。芽宮 煌里。めみやのメは芽生えるの芽で、みやは、」 「っあたしと名前似てますねっ!」 「それ4年前も言ってましたよ」 「すみません……ごめんなさい馬鹿で」  すぐにテンパる私と、常に冷静な彼女。こうして女の子と話すのはいつぶりだろう。  私達はまるでジェノバさんとタイムくんのように対照的だけど。でも楽しい。 「謝らなくて良いです、あかり」  彼女が見せてくれた、ぱあっと可愛らしい笑顔に安心した。  両方のほっぺたのエクボが、余計に彼女の笑顔を引き立たせている。 「き、きらりちゃんっ!」 「はい?」
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