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ああ、何でだろう。
言いながら止まらなくなってしまった涙は、これってこれって、私は自分の為に泣いているの? 自分のエゴの為に泣いてるの? 勝手な事言ってるのは私もおんなじ?
悔しい。もっと強く、疲れなんか知らない身体に生まれてきたかった。もっともっと、あの人の役に。雑念も煩悩も全て捨てて。あの人の為だけに生きたい。泣きたくない。女だからって、泣いて許されると思ったら大間違いよ。
金髪の真珠組の女の子は、キョトンとした顔で私と――私の背後に現れた人を見ていた。
「貴女、ジェノバ様の事が好きなんですか?」
「えっ。えっと……」
好き……だけど、もしどこが好きかと言われたらそんなのはよくわかんない。でも、でも。
「私は、ジェノバさんが、好き――です。何よりも、どんなものよりも、」
「よかったぁ~っ!」
「えっ!?」
私に背後から抱きついて来たのは、タッタイムくんっ!?
「えへへ。あかりさん、ぼく応援しますよ~」
いつもの作業着にいつもの屈託の無い笑顔のタイムくん。しかし、彼の右手には、見知らぬ黒い大きなビニールの袋が抱えられていた。服、かな。
「タイムくん、あっあの」
「行きましょうっあかりさんっ。ぼくも師匠もお腹ペコペコですよー」
「あっ、は、はいっ!」
「あかりさん。嘘じゃないですよね?」
「えっ?」
「好きって言ったの」
私は、タイムくんの目を見てしっかりと頷いた。
嘘は、吐いて無い。泣く必要も、怖がる必要も無い。好きって言ったから嫌われるなんてそんなのあるはずない。信じてる。いつか、直接――言えたら。貴方は驚くのかな。
お願いだから、笑って欲しい。
「待ちなさい、雨宮 朱里。さくら組の芽宮 煌里が心配していましたよ。何度もここへ来ました。朝食を一緒に食べる約束だったのに来なかったから、病気か? と。彼女の持ち場のガーデンを通りますね? 会ってから、鍛冶場へ出勤なさい」
「っああっ! そうだったああっ! すっすみませんっ! すみませんんっ!!」
「謝るのは芽宮 煌里に。さあ行きなさい」
「はっはいいっ! 行きましょうっ! タイムくんっ!」
「はぁーいっ」
金髪の真珠組の女の子は、私の百面相に全く動じず。いつも通り真顔のまま私とタイムくんを送り出してくれた。
なんだかんだ言って、色んな人に支えられてるんだな……私。
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