鍛冶の堅物男と珈琲メイド娘。

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「あかりと申します」  昔から。  私には霊感が結構あるようで。こうして霊とも良く会話をしてしまいます。  随分陽気な方だなー。  まるで前に読んだ小説の“江戸っ子風”なオジサン幽霊は、白い着物の懐から紙とペンを取り出して。「最後にその名前をどう書くのかだけ教えてくれ」と言ってきたので。私は笑顔でペンを受け取り、「あま、みや、あか、り」と言いながら「雨宮 朱里」と書きました。  あまみやって、呼ばれる事はあまり無いので気軽にあかりって呼んで下さいね。って言おうとして顔を上げたら、オジサンは既に飛んで行ってしまった後でした。変な人だなぁ。  あっ。ついでにご説明させて頂きますと、私は――ここ、水晶で創られた巨大なお城。このアイゼル城で働いている普通のメイドです。  ここにはメイドが現在238人おりまして。10人から20人位でチーム編成されているんです。皆それぞれに仕事が割り振られていて、どれも大変で大事なお仕事ばかりなんですよ?  良くお目に掛かるのは、アイゼル城の美しいお庭を管理する、さくら組の人達。畑や噴水に勝手に入ると、ピンクのメイド服を着た女の子に鎌やクワを投げられてしまいますのでお気を付け下さい。  あ。窓の外を見てみて下さい。あの青いメイド服の女の子達は、お城みーんなのお洗濯を担当する、せっけん組です。ダブレスのみなさんや、アイゼルで働く方々の制服や私服も全て、あの方達が管理しています。  そして武器や防具を管理する、赤薔薇(あかばら)組。メイド隊の中でも上位権力を持っています。何故赤薔薇なのかは謎だけど、武器についた血痕イコール赤いイコール赤い薔薇って事なのかなって思ってます。勿論、血のような真っ赤なメイド服を着ています。職人肌の女の子が沢山居ますね。  ちょっと余談を挟みますが、アイゼルに住むメイド隊の女の子達は。アイゼル城の丁度北側に建っている、メイド養成所で毎朝お祈りをし。夕方、武道を習い。夜にはあらゆる武具の扱いや、一般教養・歴史・語学などをしっかりと勉強しています。養成所にはメイド達の寮もありまして。見習いはほとんど、アイゼル城で生活したり働くことは出来ません。たまに実習で敷地内に入る事が出来るくらいなんです。見習い期間は半年から1年。今居るメイドの2、3割は見習いです。
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