42人が本棚に入れています
本棚に追加
「ジェノバさんの幸せを願わなきゃ。私はこの気持ち、忘れます」
そう、ただのメイドとして。尽くす。ただ、それだけよ。だから、泣いちゃだめ。
「あかりさん……」
「あかり? タイム」
人影に気付いてしまったジェノバさんが、私とタイムくんに駆け寄ってきて下さった。
「それ……。な、お前。どうして泣いてる?」
ジェノバさんがデザインしてくださったメイド服に、彼はすぐに気付いてくれて。少しだけ、嬉しそうな目元になった。じっくりと私の姿を見ていた途中、私が泣いていたもんだから。また心配をかけてしまう。
「たっ玉ねぎを! きっ、きっていた、だけですっ」
「玉ねぎ?」
そんなのは嘘だと疑う険しい顔で、私の顔を覗き込んで来たジェノバさん。いやだな。目の前で泣くのだけは、したくなかったのに。彼の手が、私の涙を拭おうと頬に触れた。
「ッ師匠! さっきのはどーゆー事です!」
ジェノバさんの腰布を強引に掴んだタイムくんは、かなり怒った様子でジェノバさんに食って掛かった。
「さっきって」
「ティラキリーゼ様は結婚したばかりですよ!」
えっ結婚!?
「ああ、そうだな」
「新妻に手を出すだなんてどーゆー神経してるんですかっ! あかりさんなんか、不安がって泣いちゃったじゃないですか! こんの浮気モノっ! あかりさんをオモチャみたいに扱うのは止めてください! 人の気持ちは、簡単じゃ無いんですよ!」
私もジェノバさんもキョトン。
い、いや……タイムくん、違うよ。
「ティラキに俺が手を出していたように見えたのか」
最初のコメントを投稿しよう!