鍛冶の堅物男と珈琲メイド娘。

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「あっ。それは授業で習いましたっ!」 「ああ。その人狩りに攫われかけて捕まりそうになった時、俺は川の激流に一人船に乗って逃げた。そのまま海に出て四日位漂流してたら、ある漁師に拾われて。それでそのまま北の大陸に連れていかれたんだ。衰弱していた俺をかくまって育ててくれたのは、ココローグという人で。俺はその人に鍛冶を教わったんだ」  ジェノバさんが少しこの国の人達と雰囲気が違うのは、そーいう体験があるからなのかな。 「し、師匠。北の大陸って……確か鎖国されてて入れないですよね」  タイムくんの言葉に、ジェノバさんは頷く。 「最近はやや他国と交易するようにもなったが、基本的には閉鎖的だな。北大陸にはリゼルという城があって、このアイゼル城が中央大陸を納めているように。リゼルが北大陸を統括している。あの頃は、城から許可を取った漁猟の為の船以外は出る事も入る事も出来なかったらしい」 「あの……ジェノバさんは、その北大陸でそのまま育ったんですか? 生まれは?」 「生まれはアイゼル城下。育ちはリゼルだ。俺がアイゼルで鍛冶師として雇われてまだ二年。あかりの方が、王宮暮らしについては詳しいんじゃないか?」 「いっいえ! そんな事は……! そっか。ジェノバさんって、ずっと昔からここで鍛冶師をやっていた訳じゃ無かったんですね?」 「あかりさん、アイゼルには最近まで鍛冶師なんて全く居なかったんですよ。包丁や武器、武具は、昔から仲の良い南大陸からほとんど輸入していたんです」 「へっ、へえ~っ」 「常識ですよー」 「は、はいぃ、すみませんっ!」  12歳にこんなに馬鹿にされる私って、どうしようもない? は、話をもとに戻してっ!
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