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「ジェノバさん。そのリゼルとアイゼルじゃあ、文化も何もかも違うでしょうし……。こっちに久しぶりに戻って来て。慣れるの、大変でしたか?」
「そうだな、七歳の頃とは全然街並も違うし。人も結構入れかわっていた。あの頃は貴族で、今はそうじゃないし。どっちも俺だけど、……うん」
一旦、食事の手を止めるジェノバさん。
「ジェノバさん?」
「ティラキに、親に会ってくれって言われたんだ、けど。俺は」
親って、ジェノバさんの本当のご両親に?
「会うんですか? 師匠」
タイムくんの心配そうな声が、腹の奥に響いた。
「まだ……無理だな。どっちにしても気持ちは変わらないけど」
「それは、跡を継がないとか鍛冶を続けるとかそーゆー話ですか?」
私は、何も聞けなかった。ジェノバさんの問題だもん。でも、タイムくんだけじゃなくて私にもこんな大事な話をして下さるんだ……。
「ああ。リゼル城には何十人と鍛冶師が居たんだが、俺を育ててくれたココローグさんはその中でも特に素晴らしい武器ばかり作っていた。俺は、あの人の息子でもあるって思ってる。ココローグさんもそう言ってくれた。一番の目標なんだ。アイゼルの人達は、俺を世界一の鍛冶師だなんて言うけど全然、そんな事無くって。俺が打つものなんて、リゼルの本物の鍛冶師達に見せたら笑われるものばかりだろう。でも止めない。鍛冶だけは。たとえ片腕になっても」
私、鍛冶をするジェノバさんの姿がいつも眩しくて。とても好き。
きっと彼から鍛冶を取るなんて考えられない。ジェノバさんを知る人は誰もがそう思うでしょう。
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