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「うええっ!? ぼーくもですかぁっ!?」
「見習いの仕事だ」
「たっ、確かに」
「お兄ちゃんわかったっ! 鍛冶場をキレイにしたら! 鎌新しいの作ってくれるんだねっ! 絶対折れなくて絶対錆びないやつ作ってよねっ! お兄ちゃんっ。よしっ! いくよータイムー」
ずりずりと彼女に引っ張られて連れ出されて行くタイムくん。
「あああーっ! 助けてぇーっ! あかりさあーんっ!」
健闘を祈ります……。
バタンッ! と扉が閉まり。
急に静かになる部屋。
「お茶、お煎れしますね」
「……ああ」
いつもの、無口なジェノバさんに戻るとなんだかほっとする。二人同時に肩で軽く溜め息を吐いた。ふと目が合ってしまう。
「あっ、すみませんっ!」
「いや、別に」
そうそうっ。後片付け! しなきゃっ!
寝坊した分きちんとっ! てきぱきテキパキっ! お皿回収してえー。真面目にやらなきゃ。いつも通り! ジェノバさんの洗濯物運んで。お掃除!
ハッ! お湯沸いた沸いたっ! お茶お茶!
「あかり、」
「はいっ――」
ジェノバさんに名を呼ばれ、笑顔で振り向こうとした瞬間。
後ろから、彼の左腕で腰をぎゅっと抱きしめられた。
ぇ――。
なんでこんなことされてるのか。
その事を理解するのに時間がかかって。笑顔のまま。心臓すらその瞬間、止まってた気がする。
ちょっとでも振り向けば、そこにはもうジェノバさんの顔がある。
なんでこうなってるのか、全然やっぱりわからない。
嬉しいより、なんで? の方が大きかった。数秒、そのまま。
あ……ジェノバさんの香りがする。優しくて爽やかな彼の肉体の匂い。心地いい。
「奥の部屋、」
ゆっくりと、ジェノバさんは口を開いた。
「えっ。あ、はいっ!」
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