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返事と同時にまたジェノバさんの方を向こうとしたけど、すぐそこに彼の頬があってきゅん! と、して――。
やっぱり向けなかった。恥ずかしくて、無理。
「書斎に使ってたんだけど、最近はあんまり使って無いし。ベッドもあるから。そこをお前の部屋にして構わない」
ハ、ヘ?
言葉が詰まってなんにも喋れず。ただただひたすら固まっていた。
もっと近くに引き寄せられて。思わず目をギュッと瞑った。
止まらない胸の鼓動が、更に速くなって苦しい。
「メイド寮の今の部屋よりは広いだろうし。あそこまで遠いだろ」
「あ、あの、ぁのぁのっ……! でも私……」
「イヤならいいけど」
「っ違うんです! 私はジェノバさんに迷惑を掛けたく無いんです! あっ……」
思わず振り向いた瞬間、彼と私の唇がぶつかる位接近してしまって驚いて。
私は咄嗟に顔を逸らしたのに、ジェノバさんは腕をほどいてくれなかった。むしろ、そのままもっと顔が近付いて。
ジェノバさんの肌。
凄くあつい。私、恥ずかしさのせいで頭も顔も燃え尽きそう。
「ならこっちに部屋を移せ。寝坊されて連絡が取れない方が困る」
「ジェノバさん……」
彼の優しさが、とんでもなく染みた。
「着替える時と寝るときはちゃんと鍵を掛けろよ」
嬉しくて。
ジェノバさんの方をちらっと向いて。
口をつむんだまま笑って頷いた。
また、抱き止せられて。髪を撫でられて。
いつもあまりこっちを見てくれない彼の視線がずっと、私を見て離してくれなかった。
勇気を出して顔を上げたら。目が、ちゃんと合って。
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