鍛冶の堅物男と珈琲メイド娘。

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 んんーっ! だめだめっ!  しっかりしてっ、あかり! 女は度胸よっ!! そう思い、鍛冶場へとバッと入った。  そしたら「うわっ」と、何故か棒読みの低い声が耳元でして。私はその声に酷く驚きキャアアと叫んでしまう。  ――カランカランカランッ! っと、金属が転がる音。何か重たい固いモノに足を切られてそのまま再び叫び直しながら派手に倒れてしまった私。   「いたた……ッー!」すぐに左足首に激痛が走った。良く解らなかったけど、滅茶苦茶足痛いっ!! イッー! 「悪い、捕まれ」そう言いながら私をひょいと抱え上げた綺麗なオレンジ色の髪の男性。私は変な返事をして、その熱くたくましい身体に捕まった。首に腕をまわすと、その人の髪の優しい香りと、汗の匂いがふんわり飛んできて。心臓がドキッと高鳴ると同時に、安心感が広がって。このまま眠りたいくらい、何故かしっくりきた。  でも、初対面の方に抱き抱えられるなんておかしいし。「大丈夫です」と慌てて降りようとしたのだけれど、早足ですぐに医務室に連れて行かれてしまった。鍛冶場の隣の隣の部屋。何故か誰も居ない。いつもなら、ルナさんというお医者様がいらっしゃるのだけれど。  ゆっくりと、ベッドの上に座らせてくれて。私の左足を台に乗せ、手際良く傷から流れる少量の血を拭き取り手当てして下さった。 「ありがとうございます。少し切れてるだけですね」そう私がお礼を言うと、彼は眉間にシワを寄せて俯いたまま私が怪我した所に優しく手を当てる。するとその手の平が徐々に碧く光り輝く――。
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