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ある小さな村の池のほとりにお地蔵様が祀ってあります。
それは、かわいい姿のお地蔵様で昔からこの場所に立っています。
地蔵様に毎日お参りに来るおばぁさんがいます。
それは、毎日楽しそうに、嬉しそうにお参りに来ます。
「おばぁちゃん、今日も地蔵さん参りにいくんかぁ?何で毎日毎日、行くんやぁ?」
家を出て行こうとするおばぁさんに孫のユウキが聞きます。
おばぁさんは腰を少しかがませ歩きながら言います。
「そりゃ、毎日お地蔵様に会いたいからや。」
「変なの、地蔵様に会って何あるちゅうねん。」
おばぁさんの行く道を邪魔しながら話続けます。
「おばぁちゃん、いつも地蔵さんの前で一人でしゃべってるやろ。あれ恥ずかしいわ!地蔵さんに参ってもええけど一人でしゃべるのんは、やめてぇや!」
おばぁさんは、そんなユウキの顔を見てニコリと笑い、ユウキの頭に軽く手を乗せ、お地蔵様のいる方へ歩いて行きます。
おばぁさんは、この村に一番長く住んでいて、村の事は誰よりも良く知っています。
そのおばぁさんが毎日欠かさず、このお地蔵様にお参りに行きます。
毎日、お参りに来てはヒトトキをお地蔵様と過ごします。
「お前はちっとも変わらんなぁ。ワイは日に日に腰が曲がってしもうて歩くのもたいそうになってきてしもうたわ。あともう、どれくらいお前に会いに来れるか分からんけどなぁ、動けるうちは、会いにくるさかい待っといてやぁ。」
お地蔵様の前に腰をかけていたおばぁさんは「ヨッコラショ」と声をかけ立ち上がります。
こんな風に、おばぁさんは毎日お地蔵様に話かけます。
そんなある日、おばぁさんは、とうとう動けなくなりました。
お地蔵様に会いに行けなくなったのです。
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