プロローグ

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吹奏楽部というと男子が混ざっていてもおかしくないと思うのだが、この高校の吹奏楽部は女子だけで成り立っている。 彼女たちは吹奏楽コンクールの地区大会を目前に、夏休みだというのに毎日遅くまで練習している。今やっと、今日の練習が終わったところであった。 「神崎さん、ちょっといい?」 美友が首を振っているところへ、1人の女子、いや大人の女性がやって来た。吹奏楽部の顧問、立花実華(たちばなみか)である。 「はい、何ですか?」 「あの、なんていうのかな。神崎さん、けっこうリズム合ってなかったり、音もずれてたりすることあるけど、がんばればきっとできるから。コンクールまであとちょっとだから、がんばってね!」 「・・・はい」 「あ、そうだ、ちょっと待って」 立花は自分の胸ポケットからメモ帳とペンを取り出すと、何かを書いて美友に渡した。 「はい、自由曲であなたがよくミスするところと、その克服のしかた、書いておいたから」 「・・・ありがとうございます」 「じゃ、また明日もがんばろうね」
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