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井本の腕をぐいっと掴んで引き寄せると驚いた顔の井本が俺の胸に飛び付いてきて。
心臓の音聞こえてる、かも。
「ふじ、…んっ、」
呼ばれる名前も遮って井本の唇に貪りついた。
唇の柔らかい感触に、ここがロケバスの中やということもすぐ外にいるスタッフがいつ出番を呼びにくるかも分からないとゆう危機を忘れそうになる。
息を荒くしながら必死で口付けてくる井本は、恐らくもう忘れているだろう。
そのとき自分の舌に何かぬるっとしたものが触れた。
それはまさかのまさか、紛れもなく井本の舌で。
こんなときに限って、ほんまにこんなときに限って…!
普段井本から舌を入れてくるなんて有り得ない。地球が爆発しても有り得ない。
そのまま勢いに任せてお互いの舌を絡ませる。しん、としたバス内に小さく水音が響いていた。
やば、止まらんくなる。
やっとのことで思考回路を働かせ自制心を取り戻す。
「ん、たかちゃん…、このままやとさすがにやばい」
離れた唇が寂しい。
井本も我を取り返してさっきまでの積極的だった自分を思い出して気まずそうにしている、その姿が余計にかわいかった。
もうほんまに、なにこのかわいいこ…!このままバスジャックしちゃいたいわ!
「ライセンスさーん、お待たせしました、撮影おねがいしまーす!」
「うっ、わ!びびった!」
「ちょ、びびらせんなや!」
「はい?」
頭のうえにハテナを浮かばせるスタッフに隠れて、もう一度こっそりキスをしよう。
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