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母はなかなか空気の読める人で、場が沈みそうな時は決まって明るく振る舞い、その場の雰囲気を良くする。
「さぁさぁ皆さん行きますよ~!」
しかも食べる事となると人一倍テンションが上がる人でもある。
「じゃあ行くかい!」
父も気を取り直し腰を上げる。
この日は近くの焼肉屋で食べる事となった。
けして見た目繁盛はしてなさそうな感じの焼肉屋で、客の数もさほど多くはなかったが店員の印象は良かった。
「あんた暫くこういう物食べれなくなるんだからしっかり味わって食べるんだよ。」
ケラケラ笑いながら母が言う。
「じゃあ遠慮なく…。
すいませんビール下さい!」
当たり前のようにビールを注文する。
「あんた何頼んでるの!
高校ではそういうの停学になるんだからね!」
父の顔色を伺いながら母が困った顔で言った。
「まぁ高校生だから仕方ない部分もあるよな。
学校にばれないように気をつけろよ。」
どうやら中学時代に、散々酔っ払って家に帰って来た事を忘れてしまっている様子だった。
ジョッキが揃い皆で乾杯する。
「ケイの高校入学に乾杯!」
父はお酒が弱いので一人だけ烏龍茶であった。
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