16人が本棚に入れています
本棚に追加
『ほのか』
そう貴男が読んでくれる度に私は胸が締め付けられるくらい苦しくて幸せになるの。
『風音っ!』
貴男が必死に彼女の名を呼ぶ度に私は酷く醜い感情に捕らわれてしまうの。だから、どうか彼女か私のどちらかを選ばなくてはならなくなったときは私のことを選んで下さい。私は貴男だけを愛して貴男だけを選ぶから。
「ほのか姉上………」
『昌浩、どうしてそんなに泣きそうな表情をしているのです?また、どこか怪我を?』
眠っていたほのかは昌浩により起こされ身を起こせば昌浩は頭を振り怪我などしていないと告げてくれた。だけど一向に昌浩の表情は晴れることがなくどうしてなのだろうかとほのかは首を傾げた。意を決して昌浩が口を開こうとした時戸が乱暴に開いた。
「ほのかっ!」
『さ……六合!?か、風音様!』
六合の腕に抱かれている風音は真っ青な表情で浅い呼吸を繰り返しお腹に酷く大きな傷が出来ており早く治療をしなくては助からないのが一目で分かった。
「ほのか、風音の治療を!」
六合の言葉にほのかの瞳が一瞬酷く凍り付いた。
.
最初のコメントを投稿しよう!