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ほのかは産まれながら天一と同じ様に移し身が使え、幼い頃から沢山の人の傷を自分に移していた。だが、それは皆軽いもので死に至ることの無いものばかりだった。それでも六合はほのかが移し身を使うのを殊の外嫌がっていたのに、今風音のように健康な体だから生きているような傷を病弱なほのかでは死に至るであろう傷を移し身で治してほしいと彼は言ったのだ。
昌浩は六合の言葉に泣きそうだった表情に幾らか怒りを込めて六合を非難するが今は天一もおらずそれどころか天一にその傷を移し身させるのはほのかは嫌だった。
『………分かりました』
「ほのか姉上!?」
『昌浩、大丈夫です。私は大丈夫ですから』
止めようとする昌浩を宥め立ち上がると六合が抱く風音のお腹に手を翳し移し身を行う。昌浩の非難に冷静さを取り戻していた六合は移し身を終え崩れ落ちるほのかの体を抱き止め、すまないと何度も謝る。
『あや………まらな、いで?私は、へいきよ……?』
だから、そんな悲しそうな表情をしないで。風音様が起きたとき貴男を縛っていた"恋人"はいなくなるから。だから、風音様と幸せになって。
『………わかれ、ましょ……りく、ご……』
ほのかの言葉に六合は目を見開き瞳は傷付いたように見えたがほのかは気付かない振りをして瞼を閉じる。昌浩の泣き声に近い声と吉昌の必死にほのかを呼ぶ声、晴明がかける呪い。露樹の泣く声を聞きながらほのかは幸せそうに笑っていた。
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