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しかし、次に僕の目に飛び込んできたのは
破壊されたままの水門、陸橋……そして……
震災から2年以上が経過しつつも、未だ廃墟と化している街の姿……
「瓦礫が片づけられて来たから余り解らないかもだけど、もっと酷かったんだよ」
うん。夏月さんの言いたい事は、良く解る。
瓦礫の撤去作業が進み、更地が増えている。
野球が出来る程に綺麗になった場所もある。
僕は、この地をバーチャル上で、幾度となく歩いてきたんだ。
そのバーチャルで見た光景と、目の前に広がる現実の光景が僕の中で交差する。
建物の基礎だけを残し、全てを流された家屋。
至る所に横転している、車。
それらは撤去され、綺麗な更地と化した今だけを見たら、あの惨劇はとても想像出来ないだろう。
瓦礫の中で経営を続けたガソリンスタンド。
津波で壊滅的被害を受けたビル……
初めて来たけど、見た事のある、風景……
「あ、取り壊されてるっ!ティナたかさん、ここにね、病院があったの。公立、志津川病院。津波避難所だったんだけど、屋上以外は、飲み込まれちゃったんだぁ。助かった人は自衛隊のヘリで救出されたんだよっ」
夏月さんの言葉に、僕はテレビで見た、震災翌日の、あの病院の屋上で助けを呼ぶ方々の姿を思い出す。
そして車は、志津川病院跡地の先にある交差点を左に曲がると、真っ赤な鉄骨の骨組みだけとなりながら佇む、3階建ての建物の前に停車した。
「ティナたかさん。ここが、防災対策庁舎だよ」
防災対策庁舎。その建物の前では、沢山の方々が手を合わせ、お線香を手向けている。
「この方達は、なんでこの建物の前に集まっているの?」
僕の質問に、夏月さんは、一瞬
「えっ?」とした表情を見せ
「うん、供養……かな」と、言葉を続けた。
そう、僕は、直ぐには思い出せなかった。
自らの身の危険を感じながら、それでも防災無線を止めなかった女性の事を。
津波が予想されるから、直ちに避難するようにと、防災無線で呼びかけ続け、沢山の住民を救い、自らは逃げ遅れ、命を失った24歳の女性。
確か、婚約していて、結婚目前だったんだよね……
そうか……そうだったんだ。ここが……
僕は、夏月さん、あさみんさんと一緒に、静かに手を合わせた。
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