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「フレイ」
妻の顔色を伺うかの様にチラリと目配せをするアデル。
「良い名だわ…本当良い名前だわ。…フレイ…」
アンジェリカはパッと微笑みを綻ばせスヤスヤと寝息をたてるフレイに名前を言い聞かせるかの様に何度も、名前を呟いた。
それは、唯一無二の瞬間。
アンジェリカは子を授かり。子は名を授かる。生涯で一度だけ与えられた瞬間を…互いの心に深く刻むかの様に…
その一連の流れを見つめていたアデルは妻の反応にホッとして再び我が子に視線移し名付ける以前の段階を思い返したのだった…
内心、アデルは名付け親になると決まった瞬間から、寝ても覚めても己のセンスの無さに嘆いて今日と言う日を迎えたのだから。
場内で古びた書庫で埃塗れになりながらも書物を漁り。
メイドや庭師や憲兵に名前の候補を挙げては反応を伺い…
執務で街に足を運べば行く先々で人々に我が子の名の参考迄にと尋ねては書き留めたりと…
時には猫や鳥に迄
話し掛ける始末。
期待した返事は…
「にゃぁ」
だの
「ピヨピヨ」
だの宛てには
ならなかったが。
人々はそんな国王の姿を
ただの王様だからと言う訳ではなく「王と庶民」と言う格差を感じさせない、無邪気で飾り気のない「アデル」自身から滲み出る人柄を心から慕っているのだ。
人々だけではなく王に仕える者達も「アデル」自身が好きなのだ。
眉目秀麗・文武両道
民からの信頼も厚い。
国王として非の打ち所のないアデル。
しかし皆、口を揃えて言う台詞がある。
「「王は名付けセンスがない」」
と王らしからぬ"欠点"と迄は言わぬが、そんな所も人々の親しみやすい源の一つなのであろう。
何故、このような言われ様なのかは後のお楽しみ…
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