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太陽が真上になるころ。
城に人々が集まり始めた。
~御披露目式~
今日はこの国の王子が
生まれて初めて外の世界へ
披露される日。
フレイは5歳になる誕生日に国の伝統でお披露目式をするのだ。
見た目は年相応の愛らしい姿の幼い子供。
外では一体誰が流したのか分からない「神童」騒ぎを聞き付け、民衆が城内で特別な日のみ開放されるテラスの見える中央の敷地内に集まりだしてる。
溢れんばかりの人だかりは列を作り城外にまでに至る。
時間はまだ時計の長針があと一回りもしなければ式は始まらないと言うのに…
「貴方の時より人が集まってるそうよ?…あの子、あのテラスから民を見たら怯えて泣いてしまうかもしれないわ…。」
などと、母、アンジェリカがフレイの元に近寄り懸命に我が子に安心させようと話しかけてる。
親の心、子知らず。
とよく言ったものだ…
フレイは与えられた自分の身丈程のうさぎの縫いぐるみを抱え、キャッキャッと母に抱き着きとても上機嫌だ。
前から見れば縫いぐるみが独りでに歩いてる様にも見える…だが…愛くるしさと言ったらそれは勿論、我が子に決まっている。
満面の笑みを浮かべれば、見る者の心を奪い...
拙い言葉を発すれば、心地好く耳に響き渡る音楽かのように...
何か動作をしようものなら勤務中であるものは手を止めフレイに目線は釘付けなのだから...
…ギュゥ…
ん?
足元に絡み着く小さな金髪。
「おとうさま…かあさまが…"もちついてだいじょうぶ"ってだって」
下から見上げるクリクリとした紫色の瞳が私を映し出す。
今私は天使と会話でもしようとしてるのか?など馬鹿げた妄想は置いといて…
屈んで我が子と目線を合わせる両肩に手を置き向かい合う。
「フレイ…"もちついてだいじょうぶ"では無くて"落ち着いて大丈夫"だよ。母様はフレイにこれから起きる出来事を心配してるんだよ?」
頭を撫でて聞かせれば、フレイはクリクリした瞳を爛々とさせパァと大輪の華が咲いたかのような笑みを浮かべた。
「わかったぁ、おちつく」
と言い縫いぐるみ抱き抱えタタタッと軽やかな足取りで母の元へ駆け寄っていった…
言葉の意味など解ろうが解らなかろうが、そんな事など今はどうでもいい…ただ元気な我が子の姿を見れるだけでも私は幸せなのだから。
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