ベンチに佇む編

2/7
前へ
/528ページ
次へ
丸山ジョニーは公園のベンチの上に佇んでいた。 事の始まりは一週間前に遡る。 ジョニーが仕入れを済ませ店に戻ると、入り口の前に見知らぬ女性が一人、路地から隠れるように座っていたのだ。 そこに居られては店に入れない事もあり、渋々ではあったが声を掛けた。 「ウチに何か御用ですか?」 いえ……とだけ答える彼女は酷く怯えているようで、同じ女としては、ハイそうですか、で済ますのもどうかと思う。 そこで、店で一杯どうかと誘ったのだった。 ジョニーが仕切っていると言っても過言ではないバーは、路地裏の目立たない店には似合わない常連客が連ねる。 ちょっと有名な隠れ家といったところだろうか。 その人気は、相談事から面倒事まで大抵のことは引き受けてくれるマスターの人柄だと言えるだろう。 かくいうジョニーもマスターの影響か、目の前にいるスレンダー美人を放っておくことが出来ずにいた。 「はい、コーヒー。これは私の奢りね。私はジョニーって言うんだけど、アンタ名前は?」 「純……」 「へぇ、いい名前じゃん。似合ってる」 自分もコーヒーを飲みながら、カウンターから彼女を見ていた。
/528ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加