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「父さーん、ちゃんと飯食えよー」
ベランダでさえずる小鳥たちの飛び立つ音がする。
眩しいくらいに晴れた青空。
いつもの朝だ。
お気に入りのスニーカーを履きながら玄関から叫ぶ。
もはや恒例と化したコレ。
大声を出さないと一日が始まった気がしない。
二人っきりの家族だし、多少むさ苦しくても許してやるか。
「ジェシカ、お前はちゃんと食ってるのか? お前の高校、弁当だろ?」
「俺はいーのっ。女の子たちから食べきれない数の弁当貰うから」
「モテモテだな……」
「まーねっ。じゃ、行ってきます。っと、鍵、忘れんなよ」
俺の名前は竹中ジェシカ。
名前も顔も女みたいだけど、歴とした男だ。
イカレタ父さんのおかげで初恋の人の名を貰った俺は、嫌々通い始めた高校で運命的な出会いをする。
その運命の相手の名前は、丸山ジョニー。
初めて交わした言葉を今でも覚えている。
「ジョニーってさ、初恋の人の名前?」
「そうだけど」
この世は面白い。
今まで退屈だった世界はジョニーのおかげで鮮やかに彩られた。
俺と同じように性別と正反対の名を持つ君。
いつも窓辺に座る君は、俺の席からは遠い。
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