1章 願いごと

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……ふぁ~。 ここはどこだ? 確か空き教室で『あれ』をするために、夕方になるのを待っていたはず。 「って、今何時だ!?」 勢い良く立ち上がると、椅子が『ガタンッ!』と大きな音を響かせた。 外を見ると、もう日が沈みかけている。 急いで『あれ』の準備をする。 五十音や鳥居に、はい、いいえなどを書いた紙を机に置き、その上に十円玉を置く。 そして、十円玉の上に人差し指を置いて、『こっくりさん』を呼ぶ。 「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」 すると、十円玉が鳥居の上に動いた。 ほ、本当に来てくれた! 「こっくりさん、いくつか質問していいですか?」 十円玉が『はい』の上に行く。 「俺は、今小説を書いているんですが、続けることに意味はあるんですか?」 すると、十円玉は次々と文字の上に止まる。 『け・い・ぞ・く・は・ち・か・ら・な・り・ち・か・く・て・ん・き・が・お・と・ず・れ・る』 よっしゃ。転機が訪れるだって。嬉しくて、思わず飛び上がってしまった。 この時、にわか仕込みの知識しか持っていなかった俺は、『こっくりさん』の途中に指を放してはいけないことを知らなかった……。
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