4章 光と影

5/43
前へ
/531ページ
次へ
「芽瑠、どうゆうことじゃ?」 「本、なくした」 「な、なくしたって、お前……」 それはつまり、相手の正体が分からないってことか? 「どこでなくしたのかな?」 「……分からない。気付いたら、なくなってた」 そりゃ、分かってたら苦労しないだろうよ。 「とりあえず、ざっと見て、この教室にはないようじゃが」 「他の部屋に行ったか?」 「どこにも行ってない。この部屋だけ」 「それなのに、どこにもないと。困ったな」 「湊はこの場面に、心当たりはないのかの?」 「そんなこと言われてもなぁ」 夕方の学校なんて、いくつも考えたベタな設定だからな。いろいろあり過ぎて、逆に分からないな。 「とりあえず、一度家に帰らないかな?」 「そうじゃな。ここで一夜を明かすのも、なんじゃし」 「仕方ない。明日また来るか」 「だな。オレもう腹減って大変なことになりそうだ」 こうして俺たちは、帰ることにした。 「しかし、本当に分からないのか?」 「あぁ、さっぱりだ」 「頼りねぇな」 「お前にだけは、言われたくねぇよ」 「ワシらから見れば、どっちも頼りないがの」 「「うるせぇよ」」 「相変わらず、完璧なシンクロじゃの」 「「嬉しくねぇ」」
/531ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加