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「苓様!」
僕に気づき満面の笑みを浮かべる晃君、匠の側に立ちまりもを眉をひそめて見下ろした。
「苓の友達なら、俺とも友達だよな。なっ、お前も名前教えろよ」
早速、まりもの必殺技が繰り出された。
一目見てウザいと判断したのか、晃君もまりもを無視する事にしたらしい。
「そろそろ味のチェックに行かないといけない時間だよ」
「わかっ……た」
ああ、匠行っちゃうのか。
匠を促すように見ている晃君、匠は返事をしながらも僕から視線を反らさない。
じっと交差する視線、とてもいたたまれなくなった僕は、2人が去って行くのを見ないですむように歩きだした。
「苓、まっ……て。話し……した……い」
すれ違いさま僕の腕を掴んで自分の方に引き寄せた。
体が傾き、匠の胸に倒れ込む。
「苓、行かないでくれ」
僕を痛いくらい抱きしめ、苦しそうに耳元で呟いた。
匠………。
暖かい。
暖かいよ…………。
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