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涙は枯れてるのか出て来なかった。
ああ、終わったんだと思うと、胸が締め付けられる痛みと、寂しさが全身を震わせる。
出ていかなきゃあ。
ねえ、紘一
僕、賭けに負けちゃった。
なんとか立ち上がると、用意していた食事をごみ箱に捨て、すべてを片付ける。
バスタブに溜めたお湯も流した。
自分の部屋に入ると、もう一度見渡す。
幸せでいっぱい笑って、辛くていっぱい泣いた部屋、きっとすぐに誰かのものになる部屋。
いつの間にか増えた物達、ボストンバッグに詰め込めた分の思い出だけ持ってくよ。
去年の誕生日に貰ったペアリング、紘一の指からいつの間にか消えてたなぁ。
そっと指から外し、リビングの机に置いた。
いつ僕がいない事に気づくかな……。
部屋の電気を消し、靴を履く。
ボストンバッグを持つ手は、可笑しいくらいに震えてる。
ゆっくりと扉を開けると、最後にもう一度、二人の場所だった部屋をみる。
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