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あたしは千鶴に勝ち、今は千鶴の介抱をしている。
本当は前に進みたいところだけど、どうにも置いていけなかったからだ。
「愛莉さん。そろそろ大丈夫です……」
千鶴が上体を起こし、座った体勢をとる。
「無理しなくて良いのよ?」
千鶴を殴った時は説得する気なんてなかったから、全力で拳を叩き込んでしまったし、思いのほかキレイに決まってしまった。
相当つらいはずだ。
「無理なんてしてないですよ。それに、ウチの所為で、この戦いに負けたら嫌ですし」
千鶴の立場が、さらっとこっち側に立っているのはあえてスルーだ。
まあ、『能力省テロ』のことは一通り話したし、長門凛のことを悪者と認識してくれたのだろう。
「でも……」
「今回は、背中を預かることは出来そうにありませんが、足枷にはなりたくないので」
これも、千鶴なりのプライドなのだろう。
「そう」
ならば、あたしもそれなりの覚悟を……。
「おお、愛莉に千鶴やん」
紫苑の声が聞こえた。
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