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◇
自分でもわからないうちに、彼に当たっていた。
彼はなにも悪くない。でも、コレから先、みんなに更にバカにされると思うと、強く当たらずにはいられなかった。
(どうして、どうして魔力を持たない平民が使い魔なのよ……っ!)
魔力を持つ貴族と魔力を持たない平民。
その間には絶大な壁があり、差別も激しい。
あたしは別に、平民を嫌っているわけではない。
ただ、魔力が極端に少ないあたしが平民の少年を召還した。
そんな事実が堪らなく嫌だった。
もうバカにされる毎日は嫌だ。見返してやりたい。
でも、それは叶わない願いで。
「はあ……」
無意識にため息が漏れる。
しかも、先ほどは、学園で知らない人はいないほどの美人で、魔法の成績もトップクラスのリシェが、あろうことかあたしの使い魔に告白をした。
それがバカにされているようで、どうしても許せなくて。
だからあたしは、思ってもないことを口にして、彼女を彼から遠ざけようとした。
でも、彼はデレデレしてるし、もうあたしの中はぐちゃぐちゃだ。
そんな時、暖かいなにかに包まれるような感覚があたしを襲った。
「ほら、サーシャ、落ち着いて」
「クレリア……」
あたしの、唯一心を許して接することのできる友達。クレリア。
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